【JAZZ】FROM THE HEART
マリエル・コーマン&ヨス・ヴァン・ビースト・トリオ 『澤野工房』
オランダから4人のハートが届きました。それもとびきり優しいハートが……。もちろん3つは、ヨス・ヴァン・ビースト・トリオのこと。彼らなしには、もう澤野工房は語れません。そのビーストが、ご自分のスィート・ハートであるマリエル・コーマンを誘って、レコーディングしたのが今作品です。
4つのハートがそろったこの一枚を手にしたあなたは、野原で幸運のクローバーを見つけたときに似たささやかな喜びを得るでしょう。なぜならコーマンの歌声には、自然のままの飾らない魅力があるから。その中に見え隠れする朗らかさ、せつなさ、優しさ。トリオの甘い演奏の中で、飛びだしすぎず、甘くなりすぎず。その微妙なバランスに、ハートがくすぐられてしまいます。まるで、さざ波が、さらさらと優しく砂浜をくすぐるように。ボサノバ調の演奏は、海辺の木陰で横たわっているかのような気持ちのよい時間を届けてくれるでしょう。
ひとつ忘れてならないのが、このボーカル曲の中にあって、トリオのみで演奏されているTr.6 "ESTATE"。そばで聞いていたコーマンも、きっとうっとりしたであろうこの1曲。彼らの円熟した美しい音の世界は、想像の域を超えてどこまでもどこまでも広がっていくのです。これこそ究極のヨス・ヴァン・ビースト・トリオ。さあ、4人のハートをじっくり感じてください。
Text by ako